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ホンダ・スポーツの原点は『S』だ。
1962年のS36O/S5OOに始まり、
S6OO、S8OOまで発展したこのスポーツカーは、
当時のホンダの個性や新機軸が盛り込まれていた。
そんな『S』の姿、ホンダ・スポ―ツの原点の思いは
レストアというかたちで現代に伝えられる…
第1回 ボディ基礎編はコチラ
第2回 ボディ完成編はコチラ
第4回 完全復活編はコチラ
この特集は「ボンダ・スタイルvol.10/7月20日発売(アポロ出版)に掲載された記事です。
アポロ出版「ホンダスタイル」 のページはコチラ。


前回までのおさらい
これまでにボディの解体、板金作業、ボディ塗装、ドッキングが行なわれ、ボディとシャシー部分が完成した。1967年式S800。熟練した職人のワザと、ひとつひとつの入念な作業により、新車のような剛性感、美しい光沢とボディラインを取り戻した。今月はエンジンとミッションの組付けを行ない、ついにエンジンを搭載する。"エスハチ復活"の日も間近である・・・
↑トラックに積まれてガレージイワサに運び込まれた時のS8O0。事故による破損も激しく、見るも無惨な姿だった。 ↑レストアでもっとも重要な工程であるボディの板金作業。1mmの誤差もない、しっかりとしたクルマの土台ができた。 ↑シャシーとのドッキング、塗装が完了した。ボンネットを閉めれば、レストア完成と言ってもおかしくない仕上がりだ。

各部品ごとに細かく分解し、スラッチなどがないか厳しくチェックする

 連載第1〜2回目では、ボディの修復(解体・板金)から塗装、シャシーとのドッキングを紹介したが、ガレージイワサでのレストア作業は、ボディや足回りと並行してエンジンも組み上げていく。そのことをあらかじめ明記した上で、今回はエンジン、ミッションの組付け作業を紹介していこう。

まず、上半分は挨まみれ、下の方はオイルなどで黒く汚れてしまっていたトランスミッションとエンジンを分離させ、ギアボックスのオーバーホールに取りかかる。各べアリング類やギア類の磨耗・破損を点検し、ギアをすり合わせていくのだが、ギアが入りやすいようにシンクロを入念にすり合わせたり、かみ合いをよくするのがコツとなる。こうした工程では特に、職人の熟練したワザと、経験によるカンが必要となってくる。

続いて、エンジンのオーバーホールだ。キャブレター、シリンダーヘッド、カムシャフト、クランクシャフトなどを部品ごとに分解し、丁寧に洗浄する。エンジンの各部品は、高回転エンジンゆえの激しい振動や経年劣化によりスラッチ(ひび割れ)や偏磨耗が生じてしまうことがある。そのため、洗浄した部品ひとつひとつをチェックしていき、細かいスラッチは溶接で修復し、再使用が不可能な部品は新品と交換しなければならない。


@ トランスミッションを分解し、丁寧に点検、洗浄する。

A 組み上がったミッションとデフ。



B エンジンをオーバーホール 部品に亀裂や磨耗がないかよく確認する。
C シリンダーへッドでは、バルブ回りが最も磨耗が進んでいた。バルブシート、バルブガイドの加工及び交換は必須だ。
DE 4個独立のCVキャブレター(5)と取り付け部分(6)。
F ウォーターポンプのペラがないので、少量制作したものを使用。
G フ口ントカバーに収納されたスタータークラッチ部分。
H エンジンとミッションをドッキングしたところ。
 
IJ エンジンルームに組み上がったコンプリートになったエンジンを積込む。

ひとつひとつ強度を確認した部品で新しいエンジンを組み上げていく

すべての部品を確認したところで、各部品の修復をしながら新たなエンジンを組み上げていく。
まずは「S」の特徴とも言えるローラー式のクランクシャフトのメイン・べアリングは磨耗が目立ったため、径をオーバーサイズに交換することになった。このS800のようにローラーべアリングを使用している場合、交換
は大変困難だ。

次にへッド回りだが、バルブやバルブガイドの磨耗があったため、バルブシートも含めて交換することとなっ
た。これにより、エンジンが発する異音や、オイル下がりを防ぐことができる。エンジンオイルが下がると、プラグの回りが真っ黒になりマフラーから青い煙が出てしまったり、馬力の低下にもつながるため、重要な作業となる。
カムシャフトは比較的磨耗が少なく状態が良かった。シム調整をしてからバルブタイミングを計測するが、ここでも職人の腕がものをいう。このようにエンジンをコンプリートに組み付ける時、オイル漏れ、水漏れに注意することが必要だ。水はエンジンの過熱を、オイルは磨耗を防ぐ大切なものなのである。
こうしてコンプリートに組み上がったエンジンを、いよいよエスハチのボディに収める。長い眠りの時を終え、エスハチに命が吹き込まれたのだ。

次号では最後の仕上げを施し、レストアがついに完成。完全復活を果たしたエスハチを青空のもとヘ連れ出し、試乗を行なうこととなっているのでお楽しみに。
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