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ホンダ・スポーツの原点は『S』だ。
1962年のS36O/S5OOに始まり、
S6OO、S8OOまで発展したこのスポーツカーは、
当時のホンダの個性や新機軸が盛り込まれていた。
そんな『S』の姿、ホンダ・スポ―ツの原点の思いは
レストアというかたちで現代に伝えられる…
第1回 ボディ基礎編はコチラ
第2回 ボディ完成編はコチラ
第3回 メカニズム編はコチラ
この特集は「ボンダ・スタイルvol.11/8月18日発売(アポロ出版)に掲載された記事です。
アポロ出版「ホンダスタイル」 のページはコチラ。




S800復活までの日々
 解体、板金、塗装、組み付け、ドッキング…約3か月に わたって1967年式S800のレストアの工程を追ってきた。 ガレ―ジイワサの職人による入念な作業によって、初めの状態からは想像もつかないほど美しく、そして元気に蘇った。これまでの連載を見逃してしまったという人のためにその過程をごく簡単に振り返ってみよう・・・
@ トラックに積まれてガレージイワサに運び込まれた時のS8OO。事故による破損も激しく、見るも無惨な姿だった。
  A まずは解体作業に取りかかった。クルマの状態をよく見て、修復可能な箇所と新たにパーツを制作する箇所を見極めていった。
  B 切りつぎ作業か完了。クルマの土台作りとなるこの工程かレストアしていく中でもっとも重要なセクションだ。
       
E ボディとシャシーがドッキングされ、エクステリアパーツが取り付けられて、一気にクルマらしい姿に。ポンネットを閉めればレストア完成と言ってもおかしくない仕上がりだ。あとはエンジン、ミッションを載せるだけ。
  D フレーム (シャシー) はサビがひどかった。事故の影響も受けていたため1mmの誤差もないよう修正した。
  C ボディ表面の小さなひずみをパテで修復し、ボディ全体に下地剤となるサーフェイサーを吹き付ける。このように下準備したボディ全塗装。
       
   
エンジン、ミッションは一度オーバーホール。組み付けてコンプリートになったもの。
  エンジン、ミッションが積込まれて完成。最後にインテリアを仕上げる。もともとの美しさを損なわないように、オリジナルに忠実に再現していく。
  こうして遂に蘇ったエスハチに試乗!!

 

クルマ好きにはたまらない永遠の憧れ「エスハチ」がついに復活を遂げた…
「エスハチ・・・」クルマ好きにとってはなんとも心地よい響きのネーミングだ。デビューは35年以上も前なので、残念ながら私はリアルタイムでステアリングを握ることはなかった。だけど街中で出会ったエスの姿はそのころから脳裏に焼き付けていた。漠然とではあるが、「いつかはぜったい乗りたい」という夢があったからだ。

当時の日本はまだ高度成長期の入り口で、所得倍増計画が発表された時代。モータリゼーションという文字が新聞やテレビにチラホラ踊り始めた頃だ。クルマそのものはまだまだ珍しい存在で、高嶺の花という表現が相応しかった。それなのにエスはフルオープンでしかも2シーターのスポーカーというのだからなんとも賛沢なクルマだった。大人でさえ憧れの存在だから、まだ子供だった私にとって街中でエスを見かければそれこそ夢をみているような浮かれた気持ちになった。それゆえ意識の中でエスはキラキラと輝いており、脳裏にキッチリと焼き付けることができた(もっともエスロクとエスハチの違いを当時はきちんとわかっていなかったので、記憶の中では多分両車がごちゃまぜになってしまっているのだけれど)。

「憧れの人」であるからこその不安と期待。「エス」は美しいままの姿で現れた…
今回、その憧れのエスに乗れるという話を最初に聞いたとき、正直ワクワクした気持ちは抑えられなかった。しかし、それと同時に一抹の不安も感じた。初恋の女性は愛くるしく、いつまでも昔のまま美化して記憶にとどめているもの。久しぶりの同窓会で再会したとき、描いていたイメージとのギャップの大きさにガッカリした経験が幾度かあり、似たような気持ちをエスで味わいたくなかったからだ。とくに工業製品であるクルマは古くなればそれだけ経年劣化も進んでおり、人間と違って歳をとったからといって味が出てくるものでもない。そんな思いが複雑に交わりながら待ち合わせ場所へ向かった。

しかし、それは杞憂であった。目の前に表れたエスは完璧なまでにレストアされており、編集部の千秋嬢とふたりで暫し見とれてしまったほどだ。いま生産ラインから出てきたばかりのような美しい輝きを放つエクステリアは忠実にオリジナルを再現し、ショルダー部のモールの仕上がりを観ただけで見事な仕事ぶりを伺い知ることが出来た。もちろんインテリアも、シンフルかつ機能的にレイアウトされたメーターやスイッチ類が当時のカタログで観たままに再現されていた。ウッドのステアリング(ナルディ)の細さが時代を感じさせが、時速200kmまで刻まれたスピードメーターや1万1000回転(レッドゾーン850O回転)までのタコメーターには今さらながらに驚かされる。1966年当時にこれほど高回転まで回るエンジンは他になかったし、OHVが主流の時代にDOHCだったということもホンダならではのこと。2輪、4輪のレースシーンで投入された技術を惜しげもなく採用していたのだから、走る実験室を標携するホンダにとっては雑作もないことだったといえる。

(上)グリルやライト周りなどに隙間やズレはない。このあたりに仕上がりの高さが表われている。
(下) 傷みやすい幌をガレージイワサでは独自に制作。オリジナルとほぼ同じものを用意している。

田園地帯に佇む姿を見ているとまるで60年代のタイムトリップしたよう?


  フルノーマルに近いこのS8OOで唯一のノンオリジナルは、マクラーレン時代のセナのモデルをレプリカしたワンオフのシフトノブ。オーナーの竹内さんのこだわりが込められたポイントだ。

←ホイールのデザインにも時代の重みを感じる。スポーツカーであっても、あくまでも日常の足として使えるようにと軟らかめのタイヤをチョイスしている。



↑シートも一度解体し骨組みを補強。ブラックの本革も新しく張り替えた。小さなシートだが、実際に座ると窮屈感はまったくない。
「もっと回せ」とせがむ『エス』。加速とともに美しいサウンドを奏でる…

イグニッションキーを捻る。エンジンは拍子抜けするほどすんなり始動。CV4連キャブはきちんと調整されており、ファーストアイドルは安定している。ギヤを1速に入れ、踏力の軽いクラッチペダルを繋ぐ。意外にも低速域からトルクがあるので静かに発進。そのままアクセルを踏み込むと3000回転を超えたあたりから音質がやや高まる。ギヤは前進4速で、リバースのみ1速の左隣にある変則パターンを採用する。

伝統の"S"オーナーズクラブ『H0NDA TWIN CAMCLUB』メンバーの郡須望さんが伝授
旧車に乗ること、"S"を楽しむこととは…
 ホンダスポーツASシリーズは最終モデルのS800Mでも生産終了後35年を経過しています。冷静になって考えれば、とても旧い車なんです。けれども、僕は手に入れてから31年になりますが、今でも乗るたぴに新鮮な喜ぴがあります。10,0OOrpmまで淀みなく回るエンシンやクイックなステアリングは言うまでもなく「魅力」なのですが 、僕は精緻性により惹かれるんですね。ちっぽけなスポーツカーなのだけれど、けっして手を抜くことなく作り込んでいる…。例えれば、クォーツ式ではなくて機械式の腕時計のような…。また、ヒストリックカーレースでも小排気量クラスの常勝マシンですが、これも過剰なほどの品質のおかげなのだと思っています。先に申し上げたように、性能的には旧さを隠せませんし、部品の供給もさすがに心許なくなってきました。ですから、この車と付き合っていくには相応の覚悟と知識は必要だと思います。信頼できるショップを見つけることがまず肝心。それと、私たちはホンダツインカムクラブというオーナーズクラブを結成して28年間活動していますが、私たちだけでなく日本各地や海外にもクラブがありますから、情報を交換し合うことが秘訣だと思います。
クラシックカーとは、ただの旧い車ではなくて「名車」を指します。ホンダスポーツは今でも世界中が「クラシック」と認めた唯一の日本車であることも忘れてはいけませんね。

↑那須さん所有のS800(レーサー仕様)現役でサーキットを走れる旧車は国内ではエスだけ
 
 
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